「どうしたの?」
「俺どうしよう」
「どうしたの?」
「涼子」
「うん」
「今、部屋に七瀬先生がいる」
一瞬あたしはクロの言っていることが理解できなかった。
やっと言葉を発したのはそれから数分後のことだ。
「どういうこと?」
クロは黙ってあたしの手をとって中へ入った。
あたしはクロの言っていたことが嘘ではないと確信した。
下を見ると無造作に脱ぎ捨てられたクロの靴の他にきれいに並べた白いハイヒールがあったからだ。
「なんで七瀬先生が」
「どうしよう、涼子」
「だからどうして」
「どうしよう、涼子」
クロはばかの一つ覚えみたいにそれだけ繰り返している。
あたしは混乱していた。
意味が分からなかった。


