「どうしたの?クロ」
「別に何も」
「嘘。目が赤い」
クロは泣きそうな顔をしていた。
赤い目を隠すようにクロはまた布団の中に深く潜った。
いつまでたってもクロは起きようとしないからあたしは仕方なく夜食を先に食べた。
それからクロの隣で横になる。
潮の香りがした。
そういえばクロは今朝海に行ったと言っていた。
「涼子、聞いた?」
「何を?」
「七瀬先生が藤木先生と付き合ってるって」
「ただの噂でしょ」
「俺、見たんだ」
「何を」
「二人がキスしてるとこ」
今朝、海の帰りにバスを待つ二人が軽いキスを交わしていたのをクロは見たそうだ。
それを聞いたあたしは真っ暗な世界に陥ったような気がした。
「俺、七瀬先生が好きだったんだ。だからショック」
そういってクロはやっと顔を出した。
あたしはクロが七瀬先生を好きだったことよりもクロの表情に驚いた。
あたしと同じ瞳をしてる。
あたしと同じ顔をしてる。
傷ついた顔ってこんな顔してるんだろうと思った。
翌日、生徒から噂のことを追及された藤木先生は七瀬先生と交際順調だと明かした。


