慣れない制服にぎこちない振る舞い。

それを見た先生はきっとあたしが新入生だと気付いたのだろう。


「おはよう。新入生?」


あたしは頷く。

そうか、といって藤木先生は花への水やりを止めた。


「ずいぶん早い登校だな。入学式はまだ後だぞ」


藤木先生の腕時計は太陽の光に照らされて銀色にきらきらと輝いていた。

ちくたく。
ちくたく。

時間は刻々と進んでいく。

あたしは藤木先生の目をまともに見られなかった。

藤木先生はあたしが新入生だから緊張していると思っていたみたいだったけれど、あたしはこれから会う新しい仲間より今始まったばかりの新しい恋に緊張していた。

まるで宝石みたいな瞳。

笑うと少年みたいな顔立ち。

花を真っ直ぐに見つめる横顔がすごく愛しい。

会ったばかりなのに可笑しいかもしれないけれど、あたしが好きになる人はこれまで直感的なものだった。

要は一目惚れ。

だから可笑しな話じゃない。


「高校生活最後まで悔いのないようにな」


ふわっとたんぽぽみたいに優しく笑う藤木先生をあたしだけのものにしたい。

あたしだけのもの。

そう思ったのにその願いはすぐに打ち砕かれた。