「ごめんね、涼子」

「なんでクロが謝るの?」

「俺、藤木先生がいなかったらいいのにって思ってる」


くす、とあたしは小さく笑った。


「あたしだってそうだよ。七瀬先生がいなければ良かったのにって思ってる」


クロも小さく笑った。


「二人が別れたらいいのにな」


ささいな願い事のようで最低なこと。

好きな人の不幸を思うことは一番最低だけれど、好きだからこそ仕方ないことでもある。

なんとも複雑だ。

窓の外を見ると花壇のあるところに藤木先生と七瀬先生が仲良そうに並んでいた。

あたしが藤木先生と初めて会ったのは教室ではなくあの花壇の場所。

あの時まだ芽が出ているだけで花壇に花は咲いていなかったけれど、あたしは最高の花を見つけた気分だった。