ある日、クロと一緒に保健室に行ったら七瀬先生の姿がなかった。


「どこ行ったんだろ、先生」


机に置いてあった参考書をぱらぱらと捲りながらクロが心配そうにする。

その後ろで、あたしは見てしまった。

窓の向こうで七瀬先生と藤木先生が二人で歩いているのを。

なにやら楽しそうに笑顔で。


「戻ろう、クロ」

「どうして?」

「いいから」


あたしの様子を変に思ったクロがあたしの視線の先を追う。

ほら、また鏡。

あたしと同じ顔をしたクロ。


「ねえ、涼子」

「なあに」

「先生を自分のものにできたらって思ったことある?」


階段を上がりながらクロはそんな事を聞いてきた。

先生を自分のものにできたら?

好きならそんな事何度だって思ってる。

あたしは頷いた。