そうだ。
あたしは、…ううん。
あたしたちは何のためにここまでやってきたのか。
今七瀬先生を解放してしまえば思い描いていた未来は水の泡になってしまう。
あたしたちのやったことは全て無駄になってしまう。
なのにどうしてやめようなんて言うの。
「クロも…」
あの女を選ぶのーーー?
ふいにクロの姿があの人と重なった。
ごめん、といったあの人。
あの女が好きだ、といったあの人。
どうしてあの女ばかり。
藤木先生も
クロも
どうしてあの女を選ぶの。
やりきれない悲しみと憎しみが湧いて出てくる。
包丁を握りしめる手に力を込めた。
「涼子!」
それなら。
藤木先生を手に入れることができないなら…
もういっそのことーー。


