授業中、くしゃくしゃに丸めた紙がどこからか飛んできた。

教壇に立つ藤木先生に見とれていたあたしはそれで目が覚める。


――このままずっと好きも言わないで諦める?


紙にはそんな事が書かれていた。

少し右上がりの見慣れた字。

あたしはその下に書き加えた。


――うん。


あたしは紙を丸めて後ろ斜めの席へ放り投げる。

クロはそれを読んで、また何か書き出す。

数分かして紙のボールがあたしのところに飛んできた。


――意気地なし。振られるのが怖いんだろ。


無造作に書かれた批判の言葉にかっとなったあたしはすぐに返事を書いた。


――じゃあ聞くけどクロは七瀬先生に気持ち伝えないの?それができないならクロも意気地なしだよ。人のことそんな風に言う資格は今のクロにない。

――俺は意気地なしじゃない。

――なら気持ち伝えるの?

――伝える。

――いつ?どこで?

――何で涼子に教えなきゃいけないの?

――だって信用できない。クロにそんな勇気があるとは思えないから。

――あるよ。

――ない。

――ある。

――ない。


それからクロの返事はなかった。

振り向くと、クロはふてくされて机にうつ伏せになって寝た振りをしていた。