肩幅が広い藤木先生の背中はクロより大きく見える。
ずーっと見つめていたら突然藤木先生が振り返った。
あたしは慌ててうつむいた。
「本当に黒井と篠田はいつ何時も一緒だな。仲が良くて羨ましいよ」
と藤木先生はいった。
「幼なじみだからね」
とクロが答える。
「そうか。二人は付き合う予定はないのか?」
冗談を交えて、藤木先生がいう。
あたしの胸はちくり、と痛んだ。
「まさか。俺と涼子はそれぞれに好きな人がいるから。な、涼子」
クロに呼ばれてあたしはやっと顔を上げる。
目の前にいた藤木先生と目が合った。
ブラウンの瞳。
七瀬先生と同じ栗色の瞳。
「藤木先生はいつ七瀬先生と結婚するの?」
あたしの口が勝手に動いた。
隣でクロの表情が沈んでいくのが見えた。
きっとあたしもそう。
無理して笑うのが精一杯。
「うん。来年にはそろそろな」
幸せそうな顔をして藤木先生が答える。
「そっか。お幸せにね」
クロがあたしを睨んだ。
まるで「嘘つけ」と言っているみたいにその目はひどく冷たかった。


