「それで…
その後、母親はどうしたんですか?」
私は思わず、身を乗り出した。
住職はそんな私の態度にも全く動じず、淡々と答えた…
「分からない…
突然、神隠しにでも遭ったかの様に消えてしまった。
私もあの人の事はよく知っているが、責任感が強く、正義感を持った立派な人物だった。
無責任に娘の遺骨を預けて失踪するなんて、私には信じられない…」
私達は正徳寺を後にした――
母親は一体、どこにいるのだろう?
私達の中に、大きな疑問が残った…
携帯電話をポケットから取り出し時間を確認すると、既に16時になっていた。
「今日の事、智子にも話しておかないといけないし、帰りに寄ろうか?」
「そうだね、順子電話してみてよ」
「こんな山間で電波入るの?」
携帯電話に視線を落とすと、十分に送受信できる状態だった。
「じゃあかけてみるね」
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