私達は本堂に上がると、ギシギシと軋む廊下を進んだ。

廊下の突き当たりに小部屋があり、納骨堂になっていた。


どこからともなく、カタカタと何かが動く音がする――


私達は、黒い文字で「朝倉家」と書かれた白い骨壺の前で手を合わせた…


お参りが終わると、住職が本堂に熱いお茶を持って来てくれた。

私はお茶を飲みながら住職に尋ねてみた。

「なぜ、朝倉さんのお宅は墓を立ててないんですか?」

「うむ……」


住職は腕を組んで少し考えていたが、私の方を見ると話し始めた…

「元々は、自宅の裏山に墓地があったのだが、20年以上前の土砂崩れで墓地も崩れてしまっての…

この裏にある墓地に、新しく立てさせて欲しいという申し出があったのだ。

そして、それまでという約束で遺骨を預かったのだ。


もう、20年近くになるかの…」


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