私達は草に埋め尽くされた庭を抜け、廃屋に辿り着いた。

玄関に掛けられた、カビで黒ずんだ表札には確かに「朝倉」と記されていた…


中を覗くと家具もそのままで、室内に洗濯物が干してあった形跡も残っていた。
とても突然、失踪した様には見えない…


先程会った、お婆さんの話を思い出す――

「朝倉さんは、まだ娘さんが幼い時に夫を癌で亡くし…

それ以降、女手一つで娘を育てていたんだ。


その娘を亡くし、その心労から行方不明になったと、言われているんだよ…」


一体母親は、どこに行ったのだろう?

話によると娘さんの遺骨は、一番近い正徳寺というお寺に納められたらしい。


私達は更にその正徳寺まで、話を聞きに行く事にした。


.