地面に座り込んで作業していた手を止めて、タオルを被ったお婆さんが振り返った。
小夜子がお婆さんに近付いて、大きな声で尋ねた。
「この辺りに、朝倉さんってお宅があると思うんですが!!」
お婆さんは少し考えて、1人で頷いた。
「ああ、あるある!!
もう、すっかり忘れてたいたよ」
忘れていた?
「ここから見える…
ほら、あの家が朝倉さんだよ」
お婆さんはそう言うと、少し先にある1件の廃屋を指差した。
「あ、あの家ですか?」
明らかに誰も住んでいない家屋を教えられ、思わず聞き返した。
「そうだよ。
もうかれこれ、20年近くなるなあ。
突然家の人がいなくなってね、あの通り荒れ放題になってるんだよ」
突然いなくなった?
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