タクシーは北山市の街中を抜け、都野市方面に向かう――


やがて、辺りは民家がまばらになり山間に入った。


タクシーは安曇野に入った。

稲が勢い良く伸びている様や、藁葺き屋根など北山市の街中ではまず見る事はない。


私達はカルテにあった住所近くで、タクシーを降りた…



周囲を見渡すと民家もほとんど無く、目印になる物も殆ど無かった。

朝倉家を探すにも、辺りに人影すらもない…


私達は一番近くに見える民家に、朝倉家の場所を尋ねる為、小川の横の狭い道を歩いて行った。

道から少し高い位置に建っている、黒い瓦屋根の農家に、庭先で作業している人を見付けた。


他に人影は見えない。

私達はすかさず声を掛けた。

「すいません、道を尋ねたいんですが」


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