ワインの瓶とグラスを片付け、リビングに戻った。
母はテーブルにもたれて、微動だにしない…
「父さんは…
父さんは、どうしたのよ?」
母はテーブルに俯せになったまま、小さな声で言った。
「帰って来ない…
もう2度と、帰って来ないわよ。
追い出しちゃった!!はははは…」
追い出した?
「何を馬鹿な事言ってるのよ…」
「本当よ。
順子の実の父親じゃないんだから、あなた一緒に住みたくないでしょ?
だから、追い出したの」
母は顔を上げると、半分塞がった目で私を見て言った。
「母さんにとって、一番大切なものは…
順子…
あなただから――」
私はその言葉を聞いて、怒りが込み上げてきた。
「何を言ってるのよ!!
人の頭の中を掻き回しておいて!!
冗談じゃないわよ!!」
私は思わず、強い口調で言い返した。
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