◇順子◇



私は自宅近くのバス停で下車し、バスの中の小夜子に手を振って別れた。

何だか、家には帰り難い…



「ただいま」

やけに静かだ…

そういえば、ここ数日父を見ていない様な気がする。


玄関から上がると、アルコールの匂いが鼻についた。


何…
昼間からこの匂いは?

リビングを開けると、母がワインの瓶を片手にテーブルで呑んでいた。

既にテーブルの上には、空の瓶が3本転がっている。


私は歩み寄ると、母に声を掛けた。

「母さん、何を昼間から呑んでるのよ?
母さん!!」


「あら~順子、おか~えり~」

泥酔していて、何を言ってるのか分からない。

それなのに、更にワインを飲もうとグラスに注ぎ始めた…


「何をやってるのよ!!」

私はワインの瓶と、グラスを取り上げた。


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