老婆は俯いたまま、震える声で答えた。
「大丈夫ですよ…
少し、身体が痛いだけですから――」
まるで、深夜に聞く猫の様なしゃがれた声だった。
「目的地まで、送りしましょうか?」
ここに、このまま放置しておく訳にもいかない。
「い、いえ…
本当に大丈夫ですから」
腰を曲げたまま老婆は立上がると、ゆっくり歩き始めた。
大丈夫なら良いけど…
「そうですか、気を付けて下さいね」
本人が言うなら仕方がない。それに、ゆっくりとはいえ、自力で歩いてるし…
私は老婆の横を、そのまま通り過ぎた。
でも、さっきあの老婆あそこにいたかな?
再び歩き始めた私は、右に曲がると自宅前の道に入った。
自宅はこの道に入るとすぐそこだ。
あれ――?
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