その看護師は、順子の言葉に明らかに怪訝な表情で言った。
「何でそんな事を聞くの?
あなたはどなた?」
確かに私達は突然現れて、意味不明な事を尋ねている…
怪しまれるのも無理はない。
「川崎です。ここの医者の川崎の娘です」
順子が名乗った瞬間、看護師の態度が変わった。
「部長先生の…」
病院の縦社会は絶対だ。順子は最初から、それを承知していたのだろう。
「18年前に、ここの脳外科病棟に入院していた患者について、少し聞きたいんですけど…」
その看護師は、少し考えてから答えた。
「18年前は、確かにこの病院にはもういましたけど、その頃の事は分かりませんね…
この病院は配置換えが、最低5年毎にありますからね。
それに、万一その当時ここにいた看護師を見付けても、何も話さないと思いますよ。
今は個人情報の管理が、とても厳しいですからね」
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