「どうしたの?」
小夜子が私の左手を掴んで、引っ張った。
「な、何でもないの…」
彩香…
何か変に、誤解してなければ良いけど。
その日の授業も全て終わり、小夜子と待ち合わせをしている校門に向かった。
登山同好会がない日は、小夜子と一緒に帰る事にしていた。
校舎を出て校門に向けて歩いていると、不意に視線を感じた。
視線の感じる方を向くと、校舎の2階の窓からスッと人影が消えた。
誰…?
地味で目立たないタイプの私が、他人に見られるなんて事はまず無い筈だけど…
少し気味悪さを感じていると、小夜子が校舎から走って来た。
「と~もこ、早く帰ろう!!」
「あ、うん…」
何か変だ…
何かが私の身辺で、起きようとしている――
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