私は言葉を失った――


私は当然、何も聞かされてはいなかったのだから…

でも…
それでも……


竹下さんは続けた。

「勝手なお願いかも知れませんが、部長の研究は今後の医療に絶対に必要なんです。

何とか研究を止める事を、思いとどまらせて頂けませんか?」


な、何を勝手な!!


私はその言葉に、かなり苛ついた。

これは医療ではなく、母子の信頼問題だ…


そういえば…

「その事に関しては、何もお約束は出来ません!!

落ち着いてから、ゆっくりと考えます。


でも、私がよくこの電車で帰って来る事が分かりましたね?」


竹下さんは爽やかに笑いながら言った。

「ええ…
それとなく部長に聞いたら、朝から外出したと聞いたものですから…

昼過ぎから、ずっと待っていました。
ははは…」


8時間もこんな所で?


この人も本気なんだ…


私は頭を下げると、竹下さんと別れた。


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