「も、もう、大丈夫だから…」

高山駅に着いて、茜さんが消え入りそうな声で呟いた。

「……順子ちゃんが大切な友達を傷付けた私を、許してくれるとは思わないけど…

これから、智子さんには償いをしていくから…


ごめんなさい……」


私は返事をする事も出来ず、ただ黙って言葉を飲み込んでいた。


そして茜さんは私の手を離れると、フラフラと改札の方に歩き始めた。

2、3歩進んだ所で立ち止まり、振り返って言った。


「順子ちゃん…

去年の、あの事件当日…

信じてもらえる様な事ではないから、誰にも言わなかったけど――


私が駆け付けた時、あの教室にはもう1人いたのよ。

顔はみえなかったけど、髪の長い女性だったと思う。


私が部屋に入って、状況を確認している間にいなくなっていたの…」


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