「は、長谷部君…

じゃあ、大学で物が落ちてきたり、崖で突き落とそうとしたのも――」


彼は私を冷めた目付きで見ると、大声で嘲笑った。

「ははは!!
そうだよ、俺だ。
お前の焦る顔を見るのがおかしくてさ、笑いを堪えるのが大変だったよ!!

ははは!!」


「外道が!!」

小夜子が、彼に向かって吐き捨てた。


「ふふふ…
毅は私の実の弟。

私は母に、毅は父に引き取られたから苗字が違うのよ。

偶然あなたと同じ大学だったから、少し手伝って貰っただけ…


さあ、そろそろ終わりにしましょう。
この子と一緒に、穴の中に逝きなさい!!」


その生死の狭間で、あの頃の出来事をなぜ忘れようとしたのか、本当の理由を思い出した――


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