その時――


石段の下から、人の声が聞こえた。

石段を上がる音、荒い息遣い…


「智子!!」
小夜子の声がした。

「大丈夫?」
続いて順子の声がした。


小夜子…
それに順子――!!


2人は私に駆け寄ると、白い猫との間に割って入った。

「と、智子…

あんた…大丈夫…そうね?」

小夜子が私の顔を見て、不思議そうに言った。

「うん、意外と冷静よ私…」


順子が、白い猫を指差して言った。

「な、何、この白い猫は!!
それに、あの深い穴は――」


2人の姿を見て安心すると同時に、自分の罪深さを改めて感じて涙が溢れてきた…

「あ、あの猫は、私が中学生の時、首塚で首を切り落とした猫…

恨みを晴らしに、私を迎えに来たの…」


2人の表情が、一瞬にして固まった…

2人共、何をどうすれば良いのか、全く分からなくなっている様子だった。


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