◇智子◇



私は境内に追い詰められ、もう逃げ場は無くなった――


死を目前にして、意外にも精神的には落ち着きを取り戻していた。


私はイジメられて逃げ場を失った時、別の人格に成るという事で自分を救ったんだ。

その時に、自分が犯した罪の罰…

その時に、自分を救う為に他の生き物が犠牲になっていたのならば、この死は当然の代償として受け入れなければならない――



しかし、目の前に座ったまま、猫は危害を加えようとはしない…


なぜ?
何かを待っているのだろうか…



ただ、言い訳するつもりは無いが、この猫を埋めた記憶はあるものの、首を切った記憶が無い。

そもそも、私が持っていたのはカッターナイフだ…


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