「ただいま…」
「おかえり」
立ち込める線香の香り…母は何故か喪服だった。
「誰か亡くなったの?」
母は俯いて私に背を向け、自分の部屋に向かいながら言った。
「う、うん…
まあ、ちょっとね…
適当に、冷蔵庫にある物食べてくれる…」
あの疲れ具合は、普通ではない…
私は気にはなったものの、問い質す訳にもいかず、後ろ姿を見送った。
食事を本当に適当に済ませると、シャワーを浴びて自室に上がった。
すると、机の上に原稿用紙が置いてあった。
なんだろう?
近付いて手にするとそれは、幼稚園の時に私が書いた作文だった。
なぜこんな所に?
不思議に思いながら読み始めた。
私のお父さん…
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