え――


右手首の指先が、ピクリと動いた!!


右手首が、指先だけで器用に私の方に向かって進んで来る。
「来ないで…
来ないで――!!」


私は部屋を飛び出し、階段を転がる様に駆け下りた。

そして居間に入ると、出入り口に鍵をかけ窓のカーテンを閉めた。


カーテンに老婆の影が映る…

「な、なぜ…
なぜ私を付け狙うの?
私が何をしたって言うの!!」


老婆はカーテン越しに、しゃがれた声で言った。

「忘れているだけ…
記憶の底に、沈めているだけじゃ。

直ぐに、思い出させてやる」

カーテン越しの影が、スッと消えた。


ど、どこ…
どこに行ったの?


緊張感が、極限まで高まる――


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