◇小夜子◇



私達は智子と別れ、北山駅から西に2つ目の高山駅で降りた。


私は自宅に帰るだけだが、順子は自宅に忘れ物をした様だった。

順子とは改札口で別れ、私は家路に着いた。


駅のすぐ西側の踏切りを越え、急な坂道を登った所の、100戸程の小さい団地に私の自宅はある。


「ただいま」
と一応声は掛けるが、誰も返事をする筈はない。


父は2年前、ダムの建設現場で鋼材が倒れ下敷きになって亡くなった…

母は生活費を稼ぐ為に、早朝から夜遅くまで働いている。

サトシはサッカーでスポーツ推薦され、都野学園高校に入学し、寮生活をしていて殆ど家に帰って来ない。


そしてあと1人、私の双子の姉の小枝子は鏡台の箱の中だ…


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