『あ…』




手を伸ばした先から目標物が逃げていく。




なんてことはない、ただの文庫本。

って言ったら著者に失礼か。




でもそんなありふれた文庫本、メジャーすぎる著者の最新刊。


の、最後の一冊が他の人の手によって持って行かれてしまった。




すかさず店員がやって来て、積み上がった本たちのなかにあるぽっかりと空いた一角に、“好評につき完売!”なんて札を置いている。




また入荷しましたらよろしくお願いしま~す♪


なんて目の前にいるあたしに声かけたりして。