“じゃあユウが、アズちゃんのかわりにならなきゃ”
幼いながらそう考えた。
今思えば、なんでそう行き着いたかわからない。
でも僕はその日からおままごとなんて止めて、毎日男と一緒に野球するようになった。
最初は皆不思議そうに僕を見た。
そりゃそうだ。
ついこの前まで、スカートしか着ない長い髪の女の子で。
それが急にバッサリと髪を切って短パンで、バットをブンブン振り回しているのだから。
でもまだ小さかったこともあって、すぐに打ち解けることができた。
だけどアズちゃんはあの日から公園に来ることも、会うことすらもなかった。
アズちゃんはもう帰ってしまったのだと気づいたのは、小学校に入学したとき。
なんでだろう。
修二が傍にいると、なぜか眠たくなる。
今だって、うとうとと夢うつつだ。
風が首にきて少し寒い。
ガタンガタンと微動を繰り返す荷台は、きっと小石を蹴飛ばしてるんだろう。
「きっつ……」
ふと漏れた修二の呟きは、また揺れる自転車の大きな音に掻き消されそうだった。


