ああ言ったのは、たぶん僕が後ろ向きで乗ったことがあるからだろう。
ちょうど中学の今くらいだった。
あのときは見事に顔面から落ちて、鼻を擦った覚えがある。
お前女なんだからと、漕いでた本人修二や親、クラスの子に散々からかわれていた。
二人乗りしていたことを怒った先生はいたけど、修二と二人乗りしたことを変に思う人はいなかった。
もうそのときには完全に今の自分に近かったから。
小さい頃のフリフリを着ていた僕じゃなくて、男といつも張り合うような野蛮な感じに成長していたから。
修二の背中に頬をつけて目を閉じると、昔の残像が浮かんできた。
「野球出来なくなったら男じゃねーよっ」
昔近所のお兄さんに言われた言葉だ。
その人は大の野球好きで、熱心な目で僕にそう言ったんだ。
それはアズちゃんに怪我をさせてしまった頃に聞いたから、とてもショックだった。
アズちゃんは野球が大好きだったから、もしかして出来なくなったんじゃないか。


