「じゃあ、とってあげるよ!」
優しいアズちゃんは、嫌な顔一つせず、黄色いジャングルジムに手を掛けた。
猿みたいにスラスラと登り、まだ短い手を一生懸命伸ばし、風船の糸を掴んでくれた。
それだけで嬉しかった。
「アズちゃんありがとう!」
「ヘヘッ、ほらとったよ!」
アズちゃんは左手でジャングルジムを掴んだまま、笑顔で振り返った。
でもその幼い片手は、自分の体重を支えるには弱すぎた。
「うわぁ!」
アズちゃんの左手は離れ、あっという間に体が急降下していく。
「アズちゃん!」
スローモーションのようにずり落ちていくアズちゃんを、ただ叫びながら見るしかなかった。
現実には、アズちゃんが落ちたのはほんの一瞬だった。
――バタンッ
まだ子供だったから、そうそう大きな音ではなかった。


