それからはその歌を何度も聞いたり、口ずさんではみたけど、一緒にいたのは小さい頃のほんの数週間。
時が経つとともに忘れ、今は最後の部分がうろ覚え程度だ。
まだ2番や続きがあった気もするけど……。
アズちゃんの顔でさえ、うやむやだ。
短髪で僕より大きくて、よく野球を近所の子としていた。
でもそんな男いくらでもいるし。
たぶん旅行で来ていたんだから、今は遠いどこかだろう。
ここ、東京に出て来ていたって僕のことは完全に忘れている。
写真も無いし、あれから一回も遊びに来なくなった。
「アズちゃんー!」
「どうしたのユウ? 泣いてるの?」
「ユウのふうせん、とんでちゃった……」
ある日の昼下がり、そのころ好きだったウサギの絵がプリントしてあるピンクの風船。
風で飛ばされ、ちょうどジャングルジムに引っ掛かってしまった。


