「しょぉがねぇなぁ。
んじゃ、俺の美技を見せてやるか」
隼人は子供のような笑顔で吉川優を見た。
カキーン、とよく響く音がする。
隼人は何かを思い出したように、何かにとりつかれたように無心にバットを振り始めた。
初めて見る。あんなに真剣な目…。
仕事をしているときとも違う。
からだ全体で…いや、生命全体をかけてバットを振る。
バッティングなんて簡単なんじゃないかと錯覚してしまいそうなほどに軽々とボールを跳ね返す。
でも周りからの歓声や、他の人が打つボールの軌道からも、それが特異なことなんだと容易に察することができる。

