「ねぇ、俺のこと、下の名前で呼んで?」


ふいに彼が優しい笑顔でささやいた。


今までといっきに空気が変わる。


「…隼…人?」


私は少し目線をはずしながら彼の名前を初めて呼んだ。


「もう1回」


「…隼人」


ふわっと彼の手が私の頭に触れた。


次の瞬間、彼の茶色の髪は私の顔のすぐ隣にあった。

一瞬何が起きたのか分からなかった。


ふわふわの髪が首筋にあたってくすぐったい。


彼の顔が…いや、隼人の顔がもう私の頬に当たりそうなくらい近くにあった。


隼人の利き手の左手が私の髪をそっと撫でる。


「…夏花、好きだよ」