大きな杉の木。


太陽の黄色い光を浴びて堂々とそびえ立つ。


初めて彼に会ったのは夜の杉の木の下。


次に彼に会ったのは雨の杉の木の下。


そして今から、太陽に包まれた杉の木の下で彼に会える。


約束の時間より大分早くに着いてしまった私は軽く目を閉じて大きな幹によしかかる。

時間が止まったかのように心地よい暑さ。


『夏花』


電話の声なんかよりずっと透る、優しい声。


ゆっくり目を開けると彼がこちらへ向かってゆっくりと歩みを進めていた。


「今寝てた?」


彼はいちいち私をからかう。でも、そんな一瞬一瞬がどうしようもなく心地いい。


「寝てない〜」


彼の家への道のりを並んで歩く。


雨の中歩いたあのときより、数段やわらかな時間が流れているのがはっきりわかった。


心なしか、彼の笑顔も前より優しい気がする。