心が、激しく傾いだ。
「…もっと深く刺せばよかった…もっと…」
無意識に口にした私のその言葉に刑事が目を見開いたのがわかった。
私たちの会話を記録している女も、とっさに少し振り向いてこちらを見た。
「…何か彼に伝えることはあるかい?
謝罪とか…」
私の言葉に戸惑いながらも、刑事は聞かなかったことにして話をすすめる。
伝えたいこと…。
あの人に伝えることなんて、ひとつしかない。
「…愛してますって伝えてください」
刑事は顔をしかめた。
当然だろう。今、殺せばよかったと言ったばかりの女の口から出た言葉なんだから。
わかるわけがない。
私の気持ちなんて。
わかってもらおうなんて思ってない。
憎んでなんかいなかった。
愛してる。
これ以上の言葉は見つからなかった。
私の感情は止まってしまった。
彼が助かったと聞いても、喜びも安堵の気持ちも、何も感じなかった。
「…私は二年前に彼に出会ったんです」

