深く沈んでしまった、私の心とは裏腹に。
軽快な走りで、東条家のガレージへと到着した。
ガチャッ――
助手席のドアを開けて、すぐ車外へと出た私。
此処へ到着するまでの間、ずっと・・・
革張りのシートに、深く座れなかった。
婚約者のために、購入したであろうメルセデス。
その席を、妾の私が穢してはダメだから。
私の存在が、邪魔をしてはいけない・・・
バタン――
ドアを閉めると、目の奥がツンとした。
導き出された答えが、心を抉りつつ・・・
「…社長、本日もお疲れ様でした。
それでは、失礼いたしますっ――」
震える声を押し殺して、最後まで仕事をやり遂げた。
今日だけは…、自分を褒めてあげたい――
急いで、その場を立ち去ろうとすると・・・
「蘭…、待て――」
「っ――!」
単調に制する声が、私を引き戻してしまう。