今日も颯爽と現れたのは、社長――



私の上司であり、幼馴染みだった・・・ヒト。






「蘭・・・?」

訝しげな表情のままで、名前を呼ばれた。



「あ、いえ・・・」


・・・ただ、名前を呼ばれただけ。


数え切れないほど、呼ばれているのに。




この胸の高鳴りが、私を苦しめる――




だけど、それはダメなの・・・・




「挨拶が遅れ、失礼いたしました。

社長、おはようございます――」


その想いを誤魔化すように、平静を装って平身低頭で挨拶した。




「あぁ…、行くぞ――」


「はい・・・」



だから、素っ気ない返事を返されても。


ズシリと重い、カバンを受け取っても。





これは決して、辛いワケじゃない・・・