モヤモヤした感情に、引き止められるように。
走り去る車を、ひらすら眺めていた。
「・・・帰るぞ――」
「あっ…、はい!」
必要以上に驚いた私は、声を荒げてしまう。
だけど・・・・
社長の一言に、また心がチクンと痛む。
ビジネスモードの抜けた、冷たい口調のせい。
後方を振り返ると、既に社長は歩き始めていて。
その広い背中に、すべてが弾き返されるよう――
私の儚い想いなんて、容易く・・・
すると社長が突然、ピタリと動きを止めた。
「・・蘭、早くしろ。」
決して、振り返ってはくれない。
声色だって、変わらずに冷たい。
なのに……、どうしても敵わないの・・・
彼以外の笑顔や言葉に、癒されたとしても。
それは、一過性のモノに過ぎなくて。
「・・っ、ハイ――」
私の心を突き動かすのは、社長しかイナイ――