“好き”というフレーズを口にするコトが出来れば、想いが実らなくても構わない。
そう伝えられればきっと満足して、楽になれるハズだから・・・
押し寄せる刹那に胸を苦しめる中、何度も願い続けた想いが虚しさを増すのに…。
どうして私は、それでも貴方を求めてしまうの――?
グイッ――
すると大きな手でグッと腕を掴まれて、私の身体は一気に引き寄せられる。
少しだけ強引な様に、トンと軽く弾みがついて眼前の胸にぶつかった。
私の視界が捉えているのは、爽やかなブルーのネクタイだけ。
広くて厚い胸の心地良さ、ホワイトムスクの甘い香りが鼻腔を掠めていて。
求めてはいけないのに、どうしても懐かしさで侵食されてしまうの。
トクン、トクンと、落ち着きを失くした鼓動の高鳴りが増していく・・・
「寝不足だろ…?」
「・・・え?」
遥か頭上から届いた清涼な声に反応して、すぐさま頭上を見上げた。