貴方のコマでしかない私に、この感情を持つ権利など許されナイ。
ひた隠しにして、決して悟られてはダメなの・・・
そうして、ようやく互いに触れるほどキョリが近づいたトキ。
「蘭・・・」
「・・・っ」
ホワイトムスクの香りとともに、甘くて清涼な声が鼓膜をスゥッと擽った。
いつもと同じように、ただ貴方に名前を呼ばれただけだとしても。
内心では瞬時に、ボッと炎が灯されてしまうほどの威力があるから…。
「ん・・・?」
それでも気づかれないように、ゆっくりと遥か頭上を見上げれば。
ブラウンの瞳で、こちらをジッと見下げる彼と視線が重なって。
「――っ」
この眼差しを向けられるだけで、ドクッと鼓動が高ぶってしまう。
優しい印象を受けるブラウンの瞳と、ただ視線が交わるだけだとしても。
パンドラの箱にしまったハズの想いは、ドッと溢れてしまいそうになる。
これが契約事項だと忘れて、勘違いして、思いを口に出せたら幸せなのに…。
拓海のコトがスキだと、真正面から堂々と伝えたいよ・・・