あまりに重い沈黙が、暫しの間、流れていく。


今日は闇夜なのか、やけに辺りが暗く感じてしまう。


眼前ですら見えない、私の道標のようだね・・・





「ハッ、君が限界・・・?

笑わせるのもいい加減にしろ…」

怒気を含む、低音ボイスを発した後藤社長。



「ッ・・・」

恐怖を駆り立てて、ギュッと眼を瞑ってしまう。


その場限りでしかない、逃げだというのに…。




すると、私を引き寄せる腕の力を、ギュッと強めたあとで。


そうして遥か頭上から、フッと嘲る笑みを零す拓海。


ゼロに近いキョリで、甘いホワイトムスクの香りに包まれた。




「笑わせるつもりなど、一切ありませんが?

ご理解頂けないのなら、敢えて言わせて頂きます。

私を敵に回さない方が、賢明だとね・・・」

威圧感を留められないほど、自信に満ちた声色の拓海。



「どういう意味だ――?」

そのせいか、一瞬怯んだように聞こえた返し。




「さぁ・・・?

悠然と出来るのも今のうち、という所でしょうか?」


「ッ・・・」


蚊帳の外に払われつつも、拓海の態度に驚かされる。



後藤社長の裏面が生易しいと思えるほどに・・・