婚約者のフレーズを口にしただけで、キリキリと痛む心臓。
ブラウンの瞳の色の変化さえ、道を寸断されゆく刹那。
この往来が巣食って、歯止めが効かない――
「拓海…のウソつき――
もう…ヤダっ・・・」
ついて出た言葉は、あまりにも覚束ないモノで。
「どういう意味だ?」
「もう…良いっ・・・」
当然の問い掛けにも、フルフルと頭を振って拒否をした。
ずっと、ずっと、封じ込めておくつもりだったのに。
貴方とは結ばれない道理だと、必死で諦めたのに。
口を開けば、零れてしまいそうになるから・・・
「っ・・・」
完全に日没した暗がりで、グニャリと歪む視界に眼を伏せた。
瞳を閉じればツーと伝い落ちる、別離を決定づける涙の雫。
これ以上、許容量オーバーの心を侵食されたくないの。
大切な想い出までもが、一瞬でデリートされそうで怖い。
縋れる場所ですら、奪わないでよ・・・
遮蔽した世界で浮かぶのも貴方だけとは、神様は無慈悲だね。
残像を追うコトすら、止めたいのに…――

