拓海を好きだなんて、簡単に口に出来ない。


ただ勇気のナイ、意気地無しでもあるけれど。



柵で雁字搦めの私には、一生言えナイ言葉・・・




「フッ…、まだ良識は保っているようだね。

大人しくするのが蘭の為だからな?」


「…はい・・・」


何も返せなかったコトが吉だったのか、実に満足気な表情で。


その彼とは正反対に、キリキリと痛みを感じてしまう心。




「もう泣くなよ…俺がいるだろう?」


「・・・・・」


零れ落ちる涙を掬い取る彼の指で、さらに誘われる雫。


決して乱暴でもないし、寧ろ優しいハズなのに。


拓海の手つきとは、全然チガウ・・・




「ッ――!」

そうして徐々に、否応ナシで狭まる距離に怯えてしまう。



近づく度に掠める香りにも、拒否反応を示してしまって。


恐怖と絶望感で、現実を遮るように固く眼を瞑った私。




コンッ――

すると、サイドガラスをノックする音が背後で木霊した。




「いい加減…、蘭を返して貰えます?」



え・・・・?