真っ暗なブラックホールへと、足を踏み入れてしまった私。


其処は何も無くて、無機質で、冷たすぎる世界だった。



“俺のモノだろう?”

そうして差し伸べられた手も、策士との茨の地へと誘うモノで。


行き着く先は、私たちの未来をピシャリと閉ざす理(ことわり)。



貴方のキモチが無い以上、至極当然のコト・・・



瀬戸際まで追い詰められていながら、どうしてかな?


それでも考えるのは、拓海のコトだけなの――







「それでは…、ありがとうございました」


「フッ、どういたしまして。

次に会う時までに、敬語は止めてくれよ?」


「っ・・・」

あれから後藤社長の運転で、自宅まで送って貰ったところで。


彼の真っ白なポルシェも、また色違い・・・


何処までも続く因果に、チクリと心に痛みが走っていく。


そんな私を畳み掛けるように、微笑する彼にも恐怖が走る。




「今日は取り敢えず…、別れのキスでもしようか?

東条君に見せつけるようにね…」


「っ――!」

突然の言葉に驚きつつ、後藤社長の視線を追ってしまう。


瞳が映し出すヒトによって、心臓がギュッと締めつけられた。




どうして拓海が、此処にいるの――?