拓海にとって私との行為は、ただの捌け口だと証明された。
それも密事では無くて、婚約者に口外していたという事実。
後藤社長が知っていた“理由”も、一筋の線の如く繋がった。
そして、何ひとつ知らないのは、私だけだと――
「・・・・・」
抜け殻になるコトなど、もの凄く簡単だと知らされる。
背きたい現実と真実の嵐に、巻き込まれてしまえば良いだけ。
保てていたハズの精神を失い、もう何も考えられない。
気を失いそうなほど、眼前がグラグラと揺れ始めていて。
目の前で対峙する2人の姿を、おぼろ気に映し出す瞳。
このまま何もかも、忘れ去りたいよ・・・
「悪いけれど、用事があるから失礼するわ。
蘭さん、これで分かってくれたでしょう…?」
ソファから立ち上がって、こちらへと歩み寄って来る彼女。
「・・・・・」
近距離で視線を合わせられず、投げやりに前方を眺める私。
「雅貴、分かってくれたみたいよ?」
「フッ…、サンキュ!」
「どういたしまして?」
満足気な表情で、颯爽と歩を進める佳奈子さん。
バタン――
遮蔽されたドアの音が、やけに耳障りに思えた。

