真底を追究していないのに、悠然とした態度の彼。


眼前で対峙すると、言葉を発するコトなど憚られてしまう。



それに先に波風を立ててしまえば、完全に屈しなければならない。


ひたすら相手を窺って、動向を見守るのが得策と踏んだの。


この考えは間違っていたのかな・・・?




ピンポーン――

静寂に包まれるスイートに、インターフォンが鳴り響く。



「やっと来たようだな」

立ち上がってドアへと向かった彼が、一旦こちらを振り返る。



「抱いていた疑問は、すぐに解決するよ」


「え・・・?」


「警醒を聞かなかった、蘭が悪いからな?」


バタンッ――

分かり辛い言葉だけを残し、彼の姿は見えなくなった。



どういうコト・・・・?






ガチャッ――

暫くして凝視していたドアが、ゆっくりと開かれた。


後藤社長と現れた人物は、予想も出来なかったヒトで。





「佐々木 蘭さん…、よね?

初めまして、私は拓海の婚約者なの――」



う・・・そ・・・・