“別離への最後の奉仕”
この言葉は、すべてを分かったうえでの発言に思えた。
同時に私の心は、ズキズキとした痛みを帯びている。
それでも、婚約者の直前までの不貞を分かっていながら。
憤慨もせず、淡々と紡ぐ彼に、疑念を感じてならない。
もしかして、アノ行為をさせるように仕向けた?
それに…、浮気をこれほど容易く許すモノ――?
飄々とした態度にも、緩ませた口元にも、ますます不信が募る。
立ち尽したままの私に、ソファへ座るように促す彼。
そうして向かいにある、1人掛けのソファへと腰を下ろした。
どちらにしろ、逃れられナイ環境が形成されているのだから。
「蘭が離れると告げた時・・・
流石の東条君も、焦っていただろうね。
最後の奉仕で、彼の本心を聞く事は出来た?」
「ッ・・・」
不自然な笑みと刺々しい言葉に、また何も言えない私。
「でもね、蘭・・・
君の微かな期待は、これから崩れる事になる。
もう俺の許でしか、生きられなくなるかな?」
余裕綽々な態度で、嘲笑を浮かべる後藤社長。
すべてを理解するのは、直ぐあとのコト――