口元は緩ませつつも、冷徹な視線が向けられていて。


相反する顔つきは、どう見ようとも異質にしか思えない。



これほど人を怖いと感じたのは、初めて――



ううん…、私が世間知らずなのかな?


今までずっと籠の中とも知らずに、のうのうと生きていて。


守られているとも知らず、1人きりだと嘆いていたのだから。





「それとも・・・

出張というのは、蘭のウソだった?」

この局面を楽しむかのように、口角をキュッと上げていて。


「っ、ち、違います!

出社後に、キャンセルされたのですからっ!

私は、ウソなんて・・・」

その態度にムッとして、つい声を荒げてしまう。


だけれど、その続きを言葉に出来なかった。



「ウソなんてついてない。

ならば、続きはどうなんだ――?」


「っ・・・」

先を急かされて、ますます言葉に詰まる私。



日帰り出張は本当で、千葉へ向かうハズだったのだから。


でも、事訳を話していけば・・・




「指輪が無いと気づかれた時点で、蘭の負けだよ?

今まで不貞を働いていたと、安易に結論が導かれる…」


「っ・・・」


ウソでしょう・・・・