無の空間で、声を押し殺して涙を流した。


その度、眼前はさらに色褪せてしまうのに・・・



「ッ・・・ッ・・・」


悲しいなんて、簡単なモノではない。


そんな表現で済むのなら、どれだけ楽だろう?



如何に自分が、彼ナシでは色の識別さえも出来ないのか。


彼の存在があって、すべてが色づけられていたのか。


無の空間に飛び出して、初めて知ってしまった。



貴方が造った見えナイ籠の中で、守られていたのだと・・・




「っ・・・」


気づかなければ、まだ幸せだったのかな?


抱き人形なのだと、判断していた方が良かった?


もう今さら…、どうにもならないのに・・・



勝手に籠を抜け出した私を待つ、道はどうなのか――


それはあまりに愚かで、滑稽な自問なのにね。




「っ…、うん・・・」

流れゆく涙を指で拭ってから、大きく首を縦に振った。


膝を突いて立ち上がると、一歩ずつ前へと踏み出す私。



用意されている、目の前のレールに乗るコトはしない。


後藤社長の思い通りになんて、絶対にさせない。



幸せになれる道は、途絶えているとしても・・・