何もかもが無機質で、冷たくて、真っ白に思えてしまう。



「ハハ・・・」

乾いた声を出して、力なく笑った。



拓海不在の社長室が、こうも変貌するなんて――




秘密の部屋での行為を終えると、いつも足早に退出されて。


ポツンと取り残された私は、辛辣極まりナイと、彼を憎んでいた。


シャワールームで泣きながら、想いを我慢して封印させて。


仕事をする彼の無表情さに慄いて、無言で立ち去っていた日々。


ただの性欲処理だと解釈し、すべてを諦めていたから。


そんな浅薄さに、自嘲する外ないよ・・・



退出する私を、最後まで“見届けて”くれていたというのに。



さり気なくて分かり辛い、拓海からの愛証だったのに――


それに気づかず、嘆いていたなんて・・・




ペタン――

秘密の部屋のドアに寄り掛かるようにして、崩れ落ちた。



「っ…うぅっ・・・」

頬をツーと伝うモノが、幾度と無く流れていく。




貴方の優しさに、気づかなければ良かった。


貴方のキモチを、聞かないでおけば良かった。



今なら気づけるモノが、あまりにも多すぎるから・・・